Art and Face

アートの輝きを見つけるブログ

現代フレスコ画が美しい「好宮佐知子展」に訪れて

6月の日曜日。

小雨が降り、湿った空気がかえって爽やかに感じる日でした。

私は静岡県三島駅に足を伸ばしました。

駅からほど近い「さんしんギャラリー善-ZEN-」で開催されている「好宮佐知子展」に訪れるためです。
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三島信用金庫の4階にある会場に足を踏み入れると、趣のある作品が程よい距離感で展示されていました。

会場の空気は穏やかで、落ち着きに包まれていました。

作品一つ一つを丁寧に見ていくと、日の光りや季節の空気感などが繊細に表現されていました。

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季節の変わり目などに、ふと訪れる変化。

そういった日々の美しい瞬間が込められている作品と思いました。

 

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三島と言う場所は、自然と生活がバランスよく合わさった不思議な町ですが、そんな町に好宮さんの作品はとてもマッチしていました。

 

フレスコ画であったり、支持体に寒冷紗が使われていたりなども「古き良き」を感じさせてくれました。しかし、どこか新鮮で身近なぬくもりにもあふれていました。

ちなみにフレスコは「新鮮な」という意味のイタリア語で、漆喰が乾かないうちに水彩絵の具で絵を書いていく技法です。石灰の層のなかに絵の具が染み込み、乾くと表面は透明な皮膜で包まれます。

フレスコという堅牢な硝子に守られた絵画。そう聞くと、作品がキラキラと光る自然物のようにも見えてきます。

しかし偶然ばかりでない、誰かの「思い」が込められていることがアート作品の素晴しさ。

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上の写真にある、フレスコで描かれた「スケッチ-曲線の音(4月)」はその普遍性、趣、純真な作風に惹かれて私が購入を決めた作品です。

(会期終了後に郵送されるためまだ会場に展示されています。)

絵画作品は決して安い買い物ではありませんが、他の買いものとはまったく違う豊かさを手にしていることを実感します。

「モノ」を買ったというよりは「空気感」を購入しているというのでしょうか。

世界に一つだけの、その作品にしかない「立ち振る舞い」。作品が我が家にやってきて、一緒の空気を感じ、一緒に空気を作り出す…。この作品が我が家にやってくる日が待ち遠しいです。

作品を買うということは、生活の「友」を得ているといっても過言ではないです。好宮さんの作品を購入しながら、そんなことを考えました。

 

「好宮佐知子展」は三島駅から徒歩8分の「さんしんギャラリー善-ZEN-」にて、6月25日(10時~18時)まで開催されています。木曜はお休みです。最終日は17時までですのでご注意ください。詳しくはさんしんギャラリー善のホームページをご確認ください。

https://www.sanshin-zen.jp/

 

 

 

 

 

 

辻堂ART HOUSEクスクスで クリスマスオーナメント作る!

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クリスマスオーナメントをアクリル絵の具と透明アクリル板と木製板で作成しました

12月半ばの日曜日、辻堂ART HOUSEクスクスで開催されたワークショップ「クリスマスオーナメントを作ろう」に参加してきました。参加者は私含め3名という贅沢な環境で制作させていただきました。

ちょうどクリスマスアイテムが欲しく、雑貨屋等を回っていたのでですが「これぞ!」いうものに巡り会えないでいました。そんなときにこのワークショップを知り、「気に入るクリスマスアイテムが見つからないなら自分で作ってしまおう!」と思いました。

ワークショップでは、アクリルの丸板と木製の丸板の2つにアクリル絵具を塗りオーナメントを作りました。

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写真は制作途中のアクリルの丸板。透明なので、裏側から絵を描いていきます。 私はクリスマスリースをモチーフに作品を作っていきました。

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完成したオーナメント。右が木製丸板、左がアクリル丸板です。木製も味わいのある作品にできました。

普段、「クリスマスをモチーフにする」と決めて絵を描くことがないため、とっても苦戦しましたが、最終的にはよい感じのオーナメントを作ることができました。

ヒモ部分も緑と赤の細糸3本を三つ編みにして作成。ずいぶん可愛くなりました。

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絵具が乾くのを待つ間に、アップルティーとクリスマスシュトーレンを振る舞っていただきました。ドイツの菓子パンであるシュトーレンはクリスマスには欠かせないパン。

いただいたシュトーレンには、花の種が練り込まれており、甘味の中に上品な香辛料の味わいがありました。

 

このワークショップは国内外で活躍するアーティストである瀬川裕美子さんが主催しており、年に数回開催されます。開催場所である辻堂ART HOUSEクスクスは彼女のアトリエでもあり、瀬川さんの作品に囲まれながらワークショップをすることができます。

昭和初期にタイムスリップしたような素敵なおうちです。

 

瀬川さんについては、WEBマガジン「たいせつじかん」にて、詳しく掲載されていましたので、下記にリンクを貼らせていただきます。

若いアーティストが才能をあきらめるなんて悲しい!「ART HOUSE クスクス」を運営する入澤日彩子さんと画家・瀬川祐美子さんのインタビュー | たいせつじかん

 

 

次回開催情報は辻堂ART HOUSE クスクスのFacebookをご確認ください。

https://www.facebook.com/arthouse.kuskus/

 



銀座で過ごす上質な時間「川合朋郎 個展 やがて来る朝」

 

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展示の様子

12月上旬の土曜日、銀座のNICHE GALLERY で行われている「川合朋郎 個展 やがて来る朝」を見にいきました。

川合氏は、2003年に東京藝術大学 大学院美術研究科修了課程を最優秀で修了されたあと、静岡県の三島で精力的に作品制作を続けている画家です。

今まで、NICHE GALLERY で個展を9回、開催されてきたとのことですが、私はそのうち4〜5回ほど訪れて作品を拝見しています。

落ち着いた雰囲気と華やかさを持つ、NICHE GALLERY。

川合氏の作品雰囲気とぴったり合っており、いつも穏やかな気持ちで作品を鑑賞することができます。

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シャンデリアが作品を優しい光でつつみます。奥にいるのが川合朋郎氏。

数年前、同ギャラリーで拝見したときの川合氏の作品は、広々とした青空を基調に「洞窟に住む人々」が哲学的に描かれていました。厳選された色味(水色と白)で描かれており、さわやかな空気が伝わって来るような作品でした。それはそれで素敵でしたが、ここ最近の川合氏の作品は「瑞々しさ」や「温かさ」が前面に現れるようになりました。

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「家族愛」がテーマとして伝わってくる作品も多く、作品内に「愛情」「温かさ」、それらを通して見える「自然の美しさ」などが含まれているように感じました。

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満点の星空が描かれている作品も。「冬空の美しさ」「愉快な人々」「炎の温かさ」など一枚の絵からいろいろなものを感じることができます。

 

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展示名にもなっている作品、『やがて来る朝』

作品に変化があったのは川合氏を取り巻く環境が大きく影響していると思いました。

人生をステップアップし、環境が変わることで、より豊かさを内包する作品に進化してきたのだと思います。

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丸いキャンバスに描かれた作品。赤い果実に手を伸ばす子どもの無邪気さが見てとれます。どことなく神話のワンシーンを思わせます。

 

先週レポートさせていただいた菊池氏の個展でも感じましたが、(記事は下記)

日々の感動を積み上げた色彩 「菊地雅文~ジャポニスムスム~」 - Art and Face

絵は年齢を重ねるほどに豊かになっていきます。それは画家の人間性が素直に作品に現れるからです。

私もできるならば、川合氏や菊池氏のように年齢を刻んでいきたいと思いました。

 

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金色と濃い青があしらわれた作品は、油絵表現であるにも関わらず、日本らしさが感じられます。下地の透け感や筆さばきなども高度な技術が使われています。

技術レベルも高く、絵描きとしても参考になる作品ばかりです。

 

川合朋郎個展「やがて来る朝」は2018年12月7日(金)まで開催中。日曜日は休廊となるのでご注意ください。

詳細は下記ニッチギャラリーオフィシャルサイトに掲載されています。

NICHE GALLERY GINZA ニッチギャラリー - EXHIBITION

 

イルミネーションで輝く銀座にどうぞ繰り出してみてください。

 

 

立ち止まると見えてくる、 リー・キット展 「僕らはもっと繊細だった。」原美術館

11月の三連休最終日、私は東京・品川の原美術館に訪れました。開催中のリー・キット『僕らはもっと繊細だった。』の鑑賞のためです。
同館に来たのは、2015年5月に開催されていた『サイ トゥオンブリー:紙の作品、50 年の軌跡』以来なので、3年半ぶりになります。
この美術館、元は実業家原邦造の邸宅として建設(1939)されたため、独特の雰囲気があり、どの美術館にもない魅力を孕んでいます。

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入り口の看板

リー・キット『僕らはもっと繊細だった。』は映像を効果的に使った素敵なインスタレーション作品でした。
部屋(空間)全体を一つの作品として使用しているため、作品数は多くありませんが、時間をかけて鑑賞できる作品が多いので見応えは十分にあります。



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5分程度の映像が多く、途中はっとする仕掛けもあるので、10分程度は一つの作品に向き合うことをおすすめします。何度か視点を変えてみて鑑賞してみても新たな発見のある展示でした。

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よく見ると映像に仕掛けがあります

また原美術館の雰囲気をよくとらえて作品が作られており、「ここだけでみられるリー・キット作品」でした。
原美術館は常設もなかなか見ごたえがありますが、今回はあえて常設展示を目にいれないように回りました。
リー・キットと美術館の、二つの世界だけを楽しみたかったからです。
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私が訪れたときにちょうど、ギャラリーガイドが行われていたので、解説を聞きながら展示を回ることができました。学芸員のお話がお上手でいろいろ裏話なども交えながら解説してくれました。

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ツアーは事前予約など必要なかったため、飛び入りで聞くことができました

裏話の一つに、リー・キッドは作品をかける場所を色々検討しながら展示方法を決めていったとのことで、試行錯誤中に開けた釘穴がところどころそのままの状態で残っているとのこと。

またリーキットは、より作品をよく見せるために、原美術館の道や展示室に壁の増設をお願いしたとのこと。
こだわりがありつつ 、偶発的に生まれた余韻を大切にしている感じもあり、素敵だなーと思いました。

色々良いところや勉強になったことは多い展示でしたが、
正直、生でみないと伝えられない展示です。
他ではみられない展示なので、ぜひ会期中に足を運んでみて欲しいです。

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映像作品と私の手。仕掛けの確認をしています。

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美術館の特徴をよく捉えた作品が多く、ここでしか見られない感じ満載でした。



絵画作品としても好きです。


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日々の感動を積み上げた色彩 「菊地雅文~ジャポニスムスム~」

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作家の菊池氏。面白くておしゃれな方です。

秋の寒さが増し、冬の装いをまとい始めた11月21日。私が定時ピッタリに会社を抜け出し、足早に向かった先は菊地雅文個展「ジャポニスムスム」(東京・京橋:アートスペース羅針盤)でした。 

個展名はフランス語の「ジャポニスム」に由来しています。

ジャポニスムは、主に19世紀後半のヨーロッパで、日本の美術工芸に影響を受けたデザインや絵画作品に対して使われる美術用語)

これはジャポニスム作品に菊池氏が影響を受けてきたことに対して、感謝を込めてつけられたそうです。(菊池氏のフェイスブック情報より)

 

菊地氏の作品はスッと気持ちに入ってくるにも関わらず、作品をじっと見つめると、積み上げてきた工夫や経験がじわりと伝わってきます。

菊地氏が日々感じ、見つめてる景色はきっと明るく美しいのでしょう。そんなふうに思わせてくれる作品ばかりでした。

 

作品を拝見してる間、菊地氏は

「若いころに画家を目指して挫折して、辞めてしまう人が多いけれど、そんなの変だ。

大人になるまで続ければ、それだけいいものが描ける。だって積み上げが違うもの」

とのこと。

これは本当に同感です。いろいろな人生を積み重ねて、絵に還元したら本当にいい絵が描けると思います。菊地さんの絵はまさにその積み上げを感じさせてくれました。

 

素敵な作品ばかりでしたが、私が得に気に入ったのは

「筆立て」


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私も家で絵を描くので、バケツや空き瓶に筆をよく立てかけていますが、リズムカルに美しく、モチーフの雰囲気もそのままに、絵にされており、とても勉強になりました。

それにしても値段がリーズナブル。飾りやすくて、美しい作品が、2万以内でも購入可能。部屋や玄関にかざさりたくなるような素敵な作品。

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どれも素敵で気持ちも元気になるような個展です。たくさんの人が訪れてくれることを願います。


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「菊地雅文展 ~ジャポニスムスム~」
日時:2018年11月19日(月)~24(土)

http://www.rashin.net/2018/03/index001133.php#kaijo

11:00~19:00 (最終日は17:00閉廊)

場所: アートスペース羅針盤
 東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F

 

※2018年12月2日に表現を少々見直し、記事を修正しました 

 

水彩作品が輝き出す。個展「シグナルとエモーション」

「Art and Face」管理人の作品を大磯「今古今」で展示させていただいております。

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3年ぶりに、個展を開催させていただいております。

場所は大磯・今古今(こんここん)。※概要は記事最後に掲載しています。

この展示、自分でいうのもなんですが「すごく良い展示」です。

額に入れて、ライトをあてた私の作品たちは自分たちを表現できる場所を見つけたようにとてもきれいに輝いています。

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今古今のコーヒーやケーキ、定食は絶品です!私の作品を鑑賞しながら、今古今でおしゃれなひとときをぜひ過ごしてください。

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併設されているレストラン日日食堂にも油絵を飾らせていただいております。

 

 

展示詳細下記です。
【会場について】
http://conccon.com/sakuraisan/
会場:今古今(日日食堂) 休館日 : 毎週月火 開館時間 : 11:30ー21:00
*上記休館日以外でも、急遽休館する場合があります。 *今古今に併設の日日食堂の営業時間帯は、上記時間と異なります。 HP をご確認の上、ご来場下さい。http://conccon.com

【展示について】
櫻井香織作品展
6/6(水)ー 6/23(土)
シグナルとエモーション
~感じる信号と溢れる感情~
植物も空も雲も花も鳥も魚も石も、みんな 何かのシグナルを発信している気がしてい ます。そんな様子を自分の想いに素直に描 いた作品を集めた個展です。

表参道で開催していた会田誠展に行ってきました


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2018年2月24日に、東京表参道(東京都港区北青山3-5-12 青山クリスタルビルB1F/B2)で開催されていた会田誠展『GRAND NO PLAM』に行ってきました。

会期は2018年2月10日(土)~24日(土)と二週間しか開催されない非常に短い間展示でした。また入場は無料の展示でした。

開催場所もギャラリーというより「ビル内」という雰囲気の場所でなんとも変わった展示でした。

 

また作品はなんとも形容しがたく、美術展なのかプレゼンなのか、インスタレーションなのか形容しがたい。

会田誠さんが日々考えたり、思ったりしたことを綴ったような展示でした。

 

私は元々会田誠さんの作品が嫌いでないです。『この作品グロテスクだな』とは思うことがありますが、真摯なコンセプトをもっている作家さんだと思っています。

 

会田誠には、例えば谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』と同じ思考の落とし方があるとかんじます。

『難しいことを考えて、悲しいことを悲しんで、おかしいことに疑問を抱いて、すごくいろいろ感じて、最終的には大きな問題を自分の手の中で解決できるシンプルさに落としてくる』

会田誠さんはそういう作家だと思っていて、そういうところが好きです。

『難しいことを難しくしない』

『難しいことは自分にわかるように作り直す』というところもあるように思います。

そういう人は真摯だと、私は思います。