Art and Face

アートの輝きを見つけるブログ

立ち止まると見えてくる、 リー・キット展 「僕らはもっと繊細だった。」原美術館

11月の三連休最終日、私は東京・品川の原美術館に訪れました。開催中のリー・キット『僕らはもっと繊細だった。』の鑑賞のためです。
同館に来たのは、2015年5月に開催されていた『サイ トゥオンブリー:紙の作品、50 年の軌跡』以来なので、3年半ぶりになります。
この美術館、元は実業家原邦造の邸宅として建設(1939)されたため、独特の雰囲気があり、どの美術館にもない魅力を孕んでいます。

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入り口の看板

リー・キット『僕らはもっと繊細だった。』は映像を効果的に使った素敵なインスタレーション作品でした。
部屋(空間)全体を一つの作品として使用しているため、作品数は多くありませんが、時間をかけて鑑賞できる作品が多いので見応えは十分にあります。



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5分程度の映像が多く、途中はっとする仕掛けもあるので、10分程度は一つの作品に向き合うことをおすすめします。何度か視点を変えてみて鑑賞してみても新たな発見のある展示でした。

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よく見ると映像に仕掛けがあります

また原美術館の雰囲気をよくとらえて作品が作られており、「ここだけでみられるリー・キット作品」でした。
原美術館は常設もなかなか見ごたえがありますが、今回はあえて常設展示を目にいれないように回りました。
リー・キットと美術館の、二つの世界だけを楽しみたかったからです。
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私が訪れたときにちょうど、ギャラリーガイドが行われていたので、解説を聞きながら展示を回ることができました。学芸員のお話がお上手でいろいろ裏話なども交えながら解説してくれました。

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ツアーは事前予約など必要なかったため、飛び入りで聞くことができました

裏話の一つに、リー・キッドは作品をかける場所を色々検討しながら展示方法を決めていったとのことで、試行錯誤中に開けた釘穴がところどころそのままの状態で残っているとのこと。

またリーキットは、より作品をよく見せるために、原美術館の道や展示室に壁の増設をお願いしたとのこと。
こだわりがありつつ 、偶発的に生まれた余韻を大切にしている感じもあり、素敵だなーと思いました。

色々良いところや勉強になったことは多い展示でしたが、
正直、生でみないと伝えられない展示です。
他ではみられない展示なので、ぜひ会期中に足を運んでみて欲しいです。

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映像作品と私の手。仕掛けの確認をしています。

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美術館の特徴をよく捉えた作品が多く、ここでしか見られない感じ満載でした。



絵画作品としても好きです。


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日々の感動を積み上げた色彩 「菊地雅文~ジャポニスムスム~」

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作家の菊池氏。面白くておしゃれな方です。

秋の寒さが増し、冬の装いをまとい始めた11月21日。私が定時ピッタリに会社を抜け出し、足早に向かった先は菊地雅文個展「ジャポニスムスム」(東京・京橋:アートスペース羅針盤)でした。 

個展名はフランス語の「ジャポニスム」に由来しています。

ジャポニスムは、主に19世紀後半のヨーロッパで、日本の美術工芸に影響を受けたデザインや絵画作品に対して使われる美術用語)

これはジャポニスム作品に菊池氏が影響を受けてきたことに対して、感謝を込めてつけられたそうです。(菊池氏のフェイスブック情報より)

 

菊地氏の作品はスッと気持ちに入ってくるにも関わらず、作品をじっと見つめると、積み上げてきた工夫や経験がじわりと伝わってきます。

菊地氏が日々感じ、見つめてる景色はきっと明るく美しいのでしょう。そんなふうに思わせてくれる作品ばかりでした。

 

作品を拝見してる間、菊地氏は

「若いころに画家を目指して挫折して、辞めてしまう人が多いけれど、そんなの変だ。

大人になるまで続ければ、それだけいいものが描ける。だって積み上げが違うもの」

とのこと。

これは本当に同感です。いろいろな人生を積み重ねて、絵に還元したら本当にいい絵が描けると思います。菊地さんの絵はまさにその積み上げを感じさせてくれました。

 

素敵な作品ばかりでしたが、私が得に気に入ったのは

「筆立て」


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私も家で絵を描くので、バケツや空き瓶に筆をよく立てかけていますが、リズムカルに美しく、モチーフの雰囲気もそのままに、絵にされており、とても勉強になりました。

それにしても値段がリーズナブル。飾りやすくて、美しい作品が、2万以内でも購入可能。部屋や玄関にかざさりたくなるような素敵な作品。

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どれも素敵で気持ちも元気になるような個展です。たくさんの人が訪れてくれることを願います。


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「菊地雅文展 ~ジャポニスムスム~」
日時:2018年11月19日(月)~24(土)

http://www.rashin.net/2018/03/index001133.php#kaijo

11:00~19:00 (最終日は17:00閉廊)

場所: アートスペース羅針盤
 東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F

 

※2018年12月2日に表現を少々見直し、記事を修正しました 

 

水彩作品が輝き出す。個展「シグナルとエモーション」

「Art and Face」管理人の作品を大磯「今古今」で展示させていただいております。

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3年ぶりに、個展を開催させていただいております。

場所は大磯・今古今(こんここん)。※概要は記事最後に掲載しています。

この展示、自分でいうのもなんですが「すごく良い展示」です。

額に入れて、ライトをあてた私の作品たちは自分たちを表現できる場所を見つけたようにとてもきれいに輝いています。

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今古今のコーヒーやケーキ、定食は絶品です!私の作品を鑑賞しながら、今古今でおしゃれなひとときをぜひ過ごしてください。

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併設されているレストラン日日食堂にも油絵を飾らせていただいております。

 

 

展示詳細下記です。
【会場について】
http://conccon.com/sakuraisan/
会場:今古今(日日食堂) 休館日 : 毎週月火 開館時間 : 11:30ー21:00
*上記休館日以外でも、急遽休館する場合があります。 *今古今に併設の日日食堂の営業時間帯は、上記時間と異なります。 HP をご確認の上、ご来場下さい。http://conccon.com

【展示について】
櫻井香織作品展
6/6(水)ー 6/23(土)
シグナルとエモーション
~感じる信号と溢れる感情~
植物も空も雲も花も鳥も魚も石も、みんな 何かのシグナルを発信している気がしてい ます。そんな様子を自分の想いに素直に描 いた作品を集めた個展です。

表参道で開催していた会田誠展に行ってきました


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2018年2月24日に、東京表参道(東京都港区北青山3-5-12 青山クリスタルビルB1F/B2)で開催されていた会田誠展『GRAND NO PLAM』に行ってきました。

会期は2018年2月10日(土)~24日(土)と二週間しか開催されない非常に短い間展示でした。また入場は無料の展示でした。

開催場所もギャラリーというより「ビル内」という雰囲気の場所でなんとも変わった展示でした。

 

また作品はなんとも形容しがたく、美術展なのかプレゼンなのか、インスタレーションなのか形容しがたい。

会田誠さんが日々考えたり、思ったりしたことを綴ったような展示でした。

 

私は元々会田誠さんの作品が嫌いでないです。『この作品グロテスクだな』とは思うことがありますが、真摯なコンセプトをもっている作家さんだと思っています。

 

会田誠には、例えば谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』と同じ思考の落とし方があるとかんじます。

『難しいことを考えて、悲しいことを悲しんで、おかしいことに疑問を抱いて、すごくいろいろ感じて、最終的には大きな問題を自分の手の中で解決できるシンプルさに落としてくる』

会田誠さんはそういう作家だと思っていて、そういうところが好きです。

『難しいことを難しくしない』

『難しいことは自分にわかるように作り直す』というところもあるように思います。

そういう人は真摯だと、私は思います。

 



 

 

 

 

様々な作家と出会え、鑑賞できるグループ展 『Tomorrow ABSTRACT 』

銀座のギャラリーQにて2018年2月5日(月)-2月10日(土)まで開催されていた『EXHIBITION ARCHIVES 2018 Tomorrow ABSTRACT 展』に行ってきました。

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 出展作家は

大塚 弓絵さん・大矢 侑輝さん・片山 摩利恵さん・内藤 瑞樹さん・沼田 浩一さん・橋野 友希さん・林 正伸さん・望月 厚介さん・有美子さんの9名。『Tomorrow ABSTRACT =明日の抽象』というだけに、抽象画が多く出品されていました。

私は出品作家の有美子さんから展示のお知らせを頂き、最終日の10日に作品を拝見してきました。有美子さんの温かい作品に感銘を受けると共に、油絵の可能性に気づかせてくれるような作品にも出会うことができました。また、展示はとても賑わっており、私が訪れていた二時間ほどの間に何人もの人が入れ替わっていました。

 

グループ展とはなにか

まずグループ展について私の知っている範囲でお話しようかと思います。

グループ展とは複数の作家が作品を出品し展示を行うことです。

通常4名から10数名くらいの規模をグループ展というかと思います(3人だと3人展、2名だと2人展と呼ぶことが多い気がします)。

グループ展の開催経緯としては、例えばギャラリーが過去出品した作家に呼び掛けたり、サークルや同級生など個人的な付き合いのある人たちがグループを組んで開催するなどという例が多いかと思います。

※詳しくはもう少しじっくり調べて「グループ展について」という記事を後ほど作成してみようかと思います。

 
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情熱に生きるアーティスト・有美子

まずピックアップするのはもちろんアーティスト有美子です!

彼女は私の多摩美術大学時代の友人であり、今でもアートについて話せる貴重な存在です。私だけではなく、彼女からパワーや刺激を受けている人は多いのではないかと思います。彼女は在学中からアート活動などに活発でその存在は大学内でも有名でした。

彼女は見ためこそキュートですが、人と臆せず垣根なく接する人柄で、その情熱と真面目さで相手も自分も成長させることのできる人でした。いつも力強いエネルギーに満ちています。

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自分の想いに真っ直ぐな彼女は、大学卒業から6年が経った今でもアートへの情熱に溢れています。そんな彼女が本展に出品した作品からは、彼女が元々持つ情熱と大人の優しさを感じることができました。

 

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『月が綺麗ですね』油彩・カンパス サイズ:220×273  制作年:2013

 

 

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『○?△?◻︎?』木枠・アクリル絵の具・毛糸 サイズ:455×380  制作年:2018 

 

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『かつて人間は丸かった/ドゥローイング』紙・鉛筆・クレヨン サイズ:310×260 制作年:2018

 

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『かつて人間は丸かった/ドゥローイング』紙・鉛筆・クレヨン サイズ:310×260 制作年:2018

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『かつて人間は丸かった』

 紙・鉛筆・クレヨン サイズ:1000×1000 制作年:2018

 

『かつて人間は丸かった』は枠の色がピンクになっており、白壁に反射しているところが可愛らしい作品でした。

本人に作品について教えていただいたところ

『かつて人間はまるかった』はギリシャ神話のアンドロギュノスをモチーフにした作品とのことでした。

アンドロギュノスについては下記のサイトに詳しい説明が載っていたのでリンクを貼らせていただきました。

ギリシャ神話とアンドロギュノス

(Hatopia 鳩子のホームページより)

有美子さんは、去年からこのアンドロギュノスをモチーフに制作をされているそうです。「人と人が引き合う強さを表現したい」というコメントをいただきました。

 

また夏目漱石の「I love you」の翻訳をタイトルに置いた作品『月が綺麗ですね』は2013年制作の比較的、年数が経った作品ですが、アンドロギュノスの2人の間に流れる空気は、きっとそういうものだろう…という理由で今回の展示に出品されたそうです。

初めは気づかなかったのですがピンクで「好き好き大好き」と書かれていて、「これはパッションに溢れた作品だったのか」と納得がいきました。

 

また『○?△?◻︎?』という少し変わったタイトルの作品は、

「本当はほぼ同じ長さの紐が、お互いに影響を与え合って、○っぽく見えたり、△っぽく見えたり、◻︎っぽく見えたりしてる作品。社会の中で人間がどう見られているのか…。実は、こういった感じ(本当はほぼ同じものなのに、お互いへの影響で違って見える)ということではないか?」と思われた作品ということでした。

 

作品について教えていただき、私は

「「愛」について、「生き方」についてこの展示は有美子さんが日々の中で考えていることが作品にダイレクトに現れてるのだな」と感じることができました。

 

 

沼田浩一さん『見つめあう季節』に感銘

 

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『見つめあう季節』

油彩・カンバス サイズ:各227×158 

 

またアーティスト沼田浩一さんの作品も私は個人的にとても好きでした。油絵をフラットに重ねた色味が美しいと思いました。

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下地の質感も美しく、一見シンプルな作品ですが、こだわりがそのまま魅力になっている絵画でした。

やはり私は油絵好きの人間なので、このような作品をみると感銘を受けます。

油絵の宝石のような輝きと、透明感をしっかりと感じさせてもらいました。

 

そのほかにも、素敵な作品が多く、また一人ひとり個性豊かな展示でした。

たくさんの作家の中から、自分好みの作家さんを見つけるのもグループ展の楽しみ方だと思います。

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オラクルカードで未来を占う有美子

展示を拝見したあと、友人数名でランチにいきました。

その際、有美子さんが各自に占いをしてくれました。

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しっかり占いたいことと連動したカードの引きに驚きました。

そして有美子さんの占いの解釈も素晴らしく、

アーティストであり、占い師であり、ベリーダンサーな「有美子」の可能性を改めて感じました。

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有美子(Yumiko)   Profile

1986 三重県生まれ

2012 多摩美術大学絵画学科油画専攻 卒業

2014 多摩美術大学 大学院油画専攻 修了

 

グループ展 

2007   「火星人の森」 HEROITOUSTUSIO美術研究所、三重

2008 「しりとり展」多摩美術大学、東京

   「via art2008」シンワアートミュージアム、東京

2009 「marble & marble 展」多摩美術大学、東京

   「marble & marble 展」ギャラリーQ、東京

   「第7回尾道帆布展」立花自然活用村、広島

   「生展」多摩美術大学、東京

2011 「one of all all of one 展」 3331 アーツ千代田内、東京

   「39アート展」 Gallary 工房 ”親”、東京

2012 「第35 回東京五美術大学卒業制作展」国立新美術館 、東京

   「2011 多摩美術大学美術学部卒業制作展」多摩美術大学、東京

     「39advance展」Gallary 工房 ”親”、東京

   「460人展」 矢田市民ギャラリー 、愛知

   「etteda2012 」 ミョンドンギャラリー、ソウル

2013 「etteda2012 」TEMPORARRY CONTEMPORARY GALLARY、東京

   「闇に見る」展 Gallary 工房 ”親”、東京

   「on paper] 展 多摩美術大学大学美術館、東京

2014 「第37回東京五美術大学卒業制作展」国立新美術館 、東京

         「少しあかるくなる展」相模原市民ギャラリー、神奈川

   「2013 多摩美術大学博士前期課程修了制作展」多摩美術大学、東京

            「30 voice,30 variations」Gallary 工房 ”親”、東京

   「99人展」ギャラリーQ、東京

   「第6回三井不動産商業マネジメント・オフィース・エクスビション」

                       浜町センタービル、東京

2015 「99人展」ギャラリーQ、東京

         「SUPER OPEN STUDIO」アトリエボイス、神奈川

2016 「津の街を描く展」津リージョンプラザ、三重

     「99人展」ギャラリーQ、東京

     「SUPER OPEN STUDIO」アトリエボイス、神奈川

2017 「The Inside 展」ギャラリーQ、東京

   「99人展」ギャラリーQ、東京

   「SUPER OPEN STUDIO」アトリエボイス、神奈川

   「Heartwarming2017展」ギャラリーQ、東京

 

Residence

2009 「Regreen Arts!2009〜風の谷へ」、山梨

   「第7回尾道帆布展」立花自然活用村、広島

 

Awords

2012 「2011 多摩美術大学美術学部卒業制作展」、福沢一郎賞

2016 「津の街を描く展」、平治煎餅賞

 

 

(2018年2月現在)

 

 

 

 

 

 

 

 

今古今 木の温もりを味わえる展示 つむぎだん

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大磯町にあるギャラリー「今古今」。

同ギャラリーのコンセプトは「今の暮らしに昔からある手仕事や知恵を取り入れることで、今の暮らしを豊かにする」です。

作品は食器や籠など生活に密着したものが多く、値段もお手頃なので購入しやすいギャラリーです。

作家の思いがつまったような温かい作品を手にいれたい人にとっては最高の場所だと思います。

 また併設されている『日日食道』で出される定食は絶品です。

時に数万円するホテルのコースよりも「日日食道の定食の方がおいしい」と思えるほど。

ひとつひとつの仕事が丁寧。


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「これが料理だ」と思える繊細で温かな味わい、1500円で食べられる最高の定食だと思います  。そんな「今古今」で現在開催されている展示は『つむきだん』です。

 「つむき」という木工作品のお披露目展示なので「つむきだん」と言うそうです。


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 「下記Facebookより」

大工の廣田利夫さんの「木を寝かせる」という技術、漆作家の森野春彦さんの「木目の美しさを活かす」ための塗りの表現、デザイナーの奥ひろ子さんのひとつの木に込められた知恵や想いをプロダクトとして「結晶化」する感性、その他たくさんの人間の自然への憧憬によって「つむき」というプロダクトが完成しました。

とのこと 。

 同ギャラリーらしい優しい展示でした。

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作品たちは、形こそ同じだけれど、色も柄も重みも違います。
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 作家の紹介の仕方も「たくみ」という感じでかっこいいですね。


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 解説なども実物を見ながらなので分かりやすいです。


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正方形ではない形が、柔らかく温かい雰囲気にしていますね。


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手にとって持ち上げると

名称などのキャプションが顔を出すのも、楽しかったです。

 

私は悩みに悩んで

朴(ほう)を購入しました。

濃い色味がなかなか美しい木です。

軽さもありアクセサリー置き場にちょうどよいと思い選びました。


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調べて見ると五月に花が咲く木のようです。素敵な木を選んで良かったと思いました。


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私はアクセサリー置き場にしましたが、お皿にしてもいいし一輪挿しを置いてもおしゃれです。

どんな使い方をしてもいいというのもなかなか心地よい作品です。



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今古今オフィシャルホームページ

http://conccon.com

 

 

毛利悠子「グレイ スカイズ」藤沢市アートスペース 企画展 

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2018年1月27日と28日に藤沢市アートスペースに行ってきました。

こちらのギャラリーは2015年にできたばかりの新しい施設です。

藤沢市や湘南地域にゆかりのある作家さんの展示を行っています。今回、拝見した毛利悠子さんも藤沢市出身のアーティストです。

地域限定にも関わらず、いつ伺ってもレベルの高い作家さんの展示をされています。

そして無料というのがとても嬉しいところです。今回の記事では写真撮影の許可がいただけたので、写真とともに私の感想を詳しく掲載します。

 

作品の良さをわかりやすく提供してくれる来場者目線の展示

展示室1に入ると、一番はじめの作品は

「Everything Flows:This is not Ocean」。

 

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ロビーからすぐに見える位置に展示されています。

 

この作品、遠目にはジョッキビールに見えます。

(写真だと色が薄いですが、もっと小麦色しています)

 でも近づいてみると、ビールだと思っていたところは波打ち際の映像だとわかります。

「街の飲み屋で日常的によく見るジョッキビールかと思っていたら、波打際だったか」

と、まるで魔法にでもかかったような不思議な気持ちにさせてくれます。

湘南地域にはビーチがたくさんあり、海が好きな人も多いため美術に興味のない人も好感を持ちやすい作品だと感じました。

 

 

タイトルも作品の印象そのものですね。

Everything Flows は日本語で「全ては絶え間なく流れている」と行った意味合いだと思いますが(違ったらすみません)その後This is not Ocean「これは海ではない」という打ち消しが素敵です。「これはジョッキビールではない」と言わないところがかっこいいです。

 

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この作品の美しさに気づいた時、私は一気に「毛利さんの作品をしっかり観たい」と感じました。

 

展示会に訪れた時「しっかり観よう」という意識になるのは意外に難しいです。

来場者に向けて、その仕掛けがしっかりしてあるというのは、とても素敵です。

来場者目線で展示されているなと、見る人に寄り添っているアーティストなのだと思いました。

 

光、音、時間を操る作家が魅せるー日常の美しさ

「Everything Flows:This is not Ocean」を過ぎると次の作品は

「Everything Flows1」「Everything Flows2」でした。

下記:「Everything Flows1」

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下記:「Everything Flows2」

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大きなオリジナルスクーリーン(板で作られていました。丸いスクリーンです)に投影された映像です。

 

この作品も印象は「美しい」ですね。

まず丸いスクリーンというのはあまり見慣れていないので、「なんだろう?」という気持ちになれます。板に投影しているのに映像の色が美しいのも驚きました。

 

映像は世界中の街をカメラを一箇所に固定して撮影されたようでした。

色味が綺麗だったり、動きがあったりと心地よい映像です。

パンフレットに「撮影地:青森、台北、ダラス、ニューヨーク、パリ、バルセロナ、ヒューストン、藤沢、ベルリン、香港、ロンドン。2014年から現在にかけて、旅先で撮りためた映像」とあります。

本当に日常のなんでもないシーンの切り取りでしたが、待ち合わせの時にボーと街を眺めている時間のような心地よさがあります。

 

 

個人的に映像作品というのは、

光=投影、映像

音=音声

時間=絶え間なく流れている

という人間の五感(時間は五感ではないが)を比較的数多く刺激する作品だと思います。そのために作品自体に一貫性がないとバラバラになりやすい表現方法だと思います。

その点、毛利さんの作品は「見せ方」が洗練されている上に、一貫性があるので伝わって来やすいです。

「Everything Flows」というタイトルもよく作品に連動していて、毛利さんがそうした流れる時間や世界の移り変わりに美しさを感じている方というのが伝わってるきました。(私はそう感じました)

 

 

意思を持った 家具たち 迷い込んだ人間

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「Everything Flows」の展示室を抜けると「パレード(旧名:大船フラワーセンター)」を見ることができます。こちらは過去すでに発表された作品のようです。

部屋全体が黄色よりのオレンジの空間になっており、機械を使って家具たちが動いています。

その動きは一定のリズムに刻まれながら、とても有機的です。

まるで家具たちが意思を持ってパレードを行っていて、その空間に人間は迷い込んでしまったようです。

ディズニーの「不思議の国のアリス」に花たちの中にアリスが入り込むシーンがあります。はじめは仲良く歌を歌いますが、最終的に「雑草」扱いされ虐められるシーンです。

本作もそう行った「違う世界に紛れ込んだ」という雰囲気があります。

どこか人間は家具たちとは違った異物。ほんの少しだけ小馬鹿にされている感覚。

家具たちの自由を邪魔できない無力さ、でも寂しさは感じさせない作品です。

 

家具でありながら、どこか植物を連想させるのは、これが大船フラワーパークからインスピレーションを得ているからだと思います。元ネタが有機的な世界だから、「家具たち=生き物」というのに違和感がないのだと思います。

(私も大船フラワーパークに行ったことがありますが、昭和感の残るいいパークです)

 

身長計に鉄琴が乗っかっていて音を奏でているのは、なかなか面白かったです。

小物のちょっとしたセンスも好きでした。

 

「完璧でないもの」に美しさを見出す

 

最後の展示は「モレモレ:ヴァリエーションズ」。

初めて見たとき、雨水やエアコン水を思い出しました。

パンフレットに説明されていましたが、駅の構内でよく見る水漏れ現場にインスピレーションを得てこの作品を生み出したそうです。

(J Rやメトロによくある、雨水をホースやビニールで集めて、バケツなどに落としているやつです)

毛利さんは水漏れ現場の駅員さんの「器用仕事」に目を向け「用の美」として芸術作品にしたそうです。

ホース内を水が流れる様はとても心地よいです。

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またこの作品はワークショップを行いながら作成されたようです。

パンフレットには

「水漏れという“危機”があれば、誰でもそれに応じることで彫刻作品ができる」という仮説のもと行われたワークショップ。

人為的に水漏れを起こした上で、複数名の共同作業によってそれに対処することで、即興的に制作されたインスタレーション」とありました。

 

流動的な水に対処する中で、生まれてくる機能的な美しさ。

 

作家の感覚ではないところから、美しさを生み出せるというのは、「なかなか開けているなー」と思います。

「全ては雨水の意思」なのに、そこには人間の判断、工夫、知恵の出し合いなども含まれてくる。人にも作品にも優しいワークショップだと思います。

 

個人的に私も駅の水漏れ対応好きです。

あれは人間の「不完全さ」でもあると思います。

雨風をしのぐように建築された駅が「自然の力」に侵食されてしまっている姿。

しかし、そこに駅員さんの丁寧な「対応」が入ってくることで

「不完全さへの包み込み。自然の力と共存する意思」を見ることができるような気がします。駅員さんリスペクトです。そして、あのシーンを作品にした毛利さんリスペクトです。

 

 

この展示は本日が最終日です。

最終日のお昼ごろの空は曇り空。

記録的な寒波に襲われた関東は、いつもの冬以上に寒く、冷んやりしています。

でもその冷んやりの中に、彼女の作品はとてもよく生えました。

(もちろん室内はあったかい)

 

きっと無機質の中に有機質を見つけるような暖かい作品群だからでしょう。

 

 アートスペースの案内によると、毛利さんの活躍は目覚ましく、日産アートアワードグランプリ(2015)や、神奈川文化賞未来賞(2016)、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞[メディア芸術](2017)を受賞しています。

毛利悠子 グレイ スカイズ|藤沢市アートスペース|Fujisawa City Art Space

 

 

藤沢アートスペースは予備校の後輩の瀬川祐美子さんが支援プロジェクトに

選ばれているなど、何だか「いいなー」と思えるギャラリーです。

 

 

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瀬川さんの展示も拝見しているのですが、その時は感想をアップできませんでした。

ぜひまた瀬川さんの展示をやってほしいです。

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