Art and Face

アートの輝きを見つけるブログ

今古今 木の温もりを味わえる展示 つむぎだん

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大磯町にあるギャラリー「今古今」。

同ギャラリーのコンセプトは「今の暮らしに昔からある手仕事や知恵を取り入れることで、今の暮らしを豊かにする」です。

作品は食器や籠など生活に密着したものが多く、値段もお手頃なので購入しやすいギャラリーです。

作家の思いがつまったような温かい作品を手にいれたい人にとっては最高の場所だと思います。

 また併設されている『日日食道』で出される定食は絶品です。

時に数万円するホテルのコースよりも「日日食道の定食の方がおいしい」と思えるほど。

ひとつひとつの仕事が丁寧。


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「これが料理だ」と思える繊細で温かな味わい、1500円で食べられる最高の定食だと思います  。そんな「今古今」で現在開催されている展示は『つむきだん』です。

 「つむき」という木工作品のお披露目展示なので「つむきだん」と言うそうです。


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 「下記Facebookより」

大工の廣田利夫さんの「木を寝かせる」という技術、漆作家の森野春彦さんの「木目の美しさを活かす」ための塗りの表現、デザイナーの奥ひろ子さんのひとつの木に込められた知恵や想いをプロダクトとして「結晶化」する感性、その他たくさんの人間の自然への憧憬によって「つむき」というプロダクトが完成しました。

とのこと 。

 同ギャラリーらしい優しい展示でした。

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作品たちは、形こそ同じだけれど、色も柄も重みも違います。
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 作家の紹介の仕方も「たくみ」という感じでかっこいいですね。


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 解説なども実物を見ながらなので分かりやすいです。


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正方形ではない形が、柔らかく温かい雰囲気にしていますね。


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手にとって持ち上げると

名称などのキャプションが顔を出すのも、楽しかったです。

 

私は悩みに悩んで

朴(ほう)を購入しました。

濃い色味がなかなか美しい木です。

軽さもありアクセサリー置き場にちょうどよいと思い選びました。


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調べて見ると五月に花が咲く木のようです。素敵な木を選んで良かったと思いました。


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私はアクセサリー置き場にしましたが、お皿にしてもいいし一輪挿しを置いてもおしゃれです。

どんな使い方をしてもいいというのもなかなか心地よい作品です。



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今古今オフィシャルホームページ

http://conccon.com

 

 

毛利悠子「グレイ スカイズ」藤沢市アートスペース 企画展 

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2018年1月27日と28日に藤沢市アートスペースに行ってきました。

こちらのギャラリーは2015年にできたばかりの新しい施設です。

藤沢市や湘南地域にゆかりのある作家さんの展示を行っています。今回、拝見した毛利悠子さんも藤沢市出身のアーティストです。

地域限定にも関わらず、いつ伺ってもレベルの高い作家さんの展示をされています。

そして無料というのがとても嬉しいところです。今回の記事では写真撮影の許可がいただけたので、写真とともに私の感想を詳しく掲載します。

 

作品の良さをわかりやすく提供してくれる来場者目線の展示

展示室1に入ると、一番はじめの作品は

「Everything Flows:This is not Ocean」。

 

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ロビーからすぐに見える位置に展示されています。

 

この作品、遠目にはジョッキビールに見えます。

(写真だと色が薄いですが、もっと小麦色しています)

 でも近づいてみると、ビールだと思っていたところは波打ち際の映像だとわかります。

「街の飲み屋で日常的によく見るジョッキビールかと思っていたら、波打際だったか」

と、まるで魔法にでもかかったような不思議な気持ちにさせてくれます。

湘南地域にはビーチがたくさんあり、海が好きな人も多いため美術に興味のない人も好感を持ちやすい作品だと感じました。

 

 

タイトルも作品の印象そのものですね。

Everything Flows は日本語で「全ては絶え間なく流れている」と行った意味合いだと思いますが(違ったらすみません)その後This is not Ocean「これは海ではない」という打ち消しが素敵です。「これはジョッキビールではない」と言わないところがかっこいいです。

 

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この作品の美しさに気づいた時、私は一気に「毛利さんの作品をしっかり観たい」と感じました。

 

展示会に訪れた時「しっかり観よう」という意識になるのは意外に難しいです。

来場者に向けて、その仕掛けがしっかりしてあるというのは、とても素敵です。

来場者目線で展示されているなと、見る人に寄り添っているアーティストなのだと思いました。

 

光、音、時間を操る作家が魅せるー日常の美しさ

「Everything Flows:This is not Ocean」を過ぎると次の作品は

「Everything Flows1」「Everything Flows2」でした。

下記:「Everything Flows1」

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下記:「Everything Flows2」

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大きなオリジナルスクーリーン(板で作られていました。丸いスクリーンです)に投影された映像です。

 

この作品も印象は「美しい」ですね。

まず丸いスクリーンというのはあまり見慣れていないので、「なんだろう?」という気持ちになれます。板に投影しているのに映像の色が美しいのも驚きました。

 

映像は世界中の街をカメラを一箇所に固定して撮影されたようでした。

色味が綺麗だったり、動きがあったりと心地よい映像です。

パンフレットに「撮影地:青森、台北、ダラス、ニューヨーク、パリ、バルセロナ、ヒューストン、藤沢、ベルリン、香港、ロンドン。2014年から現在にかけて、旅先で撮りためた映像」とあります。

本当に日常のなんでもないシーンの切り取りでしたが、待ち合わせの時にボーと街を眺めている時間のような心地よさがあります。

 

 

個人的に映像作品というのは、

光=投影、映像

音=音声

時間=絶え間なく流れている

という人間の五感(時間は五感ではないが)を比較的数多く刺激する作品だと思います。そのために作品自体に一貫性がないとバラバラになりやすい表現方法だと思います。

その点、毛利さんの作品は「見せ方」が洗練されている上に、一貫性があるので伝わって来やすいです。

「Everything Flows」というタイトルもよく作品に連動していて、毛利さんがそうした流れる時間や世界の移り変わりに美しさを感じている方というのが伝わってるきました。(私はそう感じました)

 

 

意思を持った 家具たち 迷い込んだ人間

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「Everything Flows」の展示室を抜けると「パレード(旧名:大船フラワーセンター)」を見ることができます。こちらは過去すでに発表された作品のようです。

部屋全体が黄色よりのオレンジの空間になっており、機械を使って家具たちが動いています。

その動きは一定のリズムに刻まれながら、とても有機的です。

まるで家具たちが意思を持ってパレードを行っていて、その空間に人間は迷い込んでしまったようです。

ディズニーの「不思議の国のアリス」に花たちの中にアリスが入り込むシーンがあります。はじめは仲良く歌を歌いますが、最終的に「雑草」扱いされ虐められるシーンです。

本作もそう行った「違う世界に紛れ込んだ」という雰囲気があります。

どこか人間は家具たちとは違った異物。ほんの少しだけ小馬鹿にされている感覚。

家具たちの自由を邪魔できない無力さ、でも寂しさは感じさせない作品です。

 

家具でありながら、どこか植物を連想させるのは、これが大船フラワーパークからインスピレーションを得ているからだと思います。元ネタが有機的な世界だから、「家具たち=生き物」というのに違和感がないのだと思います。

(私も大船フラワーパークに行ったことがありますが、昭和感の残るいいパークです)

 

身長計に鉄琴が乗っかっていて音を奏でているのは、なかなか面白かったです。

小物のちょっとしたセンスも好きでした。

 

「完璧でないもの」に美しさを見出す

 

最後の展示は「モレモレ:ヴァリエーションズ」。

初めて見たとき、雨水やエアコン水を思い出しました。

パンフレットに説明されていましたが、駅の構内でよく見る水漏れ現場にインスピレーションを得てこの作品を生み出したそうです。

(J Rやメトロによくある、雨水をホースやビニールで集めて、バケツなどに落としているやつです)

毛利さんは水漏れ現場の駅員さんの「器用仕事」に目を向け「用の美」として芸術作品にしたそうです。

ホース内を水が流れる様はとても心地よいです。

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またこの作品はワークショップを行いながら作成されたようです。

パンフレットには

「水漏れという“危機”があれば、誰でもそれに応じることで彫刻作品ができる」という仮説のもと行われたワークショップ。

人為的に水漏れを起こした上で、複数名の共同作業によってそれに対処することで、即興的に制作されたインスタレーション」とありました。

 

流動的な水に対処する中で、生まれてくる機能的な美しさ。

 

作家の感覚ではないところから、美しさを生み出せるというのは、「なかなか開けているなー」と思います。

「全ては雨水の意思」なのに、そこには人間の判断、工夫、知恵の出し合いなども含まれてくる。人にも作品にも優しいワークショップだと思います。

 

個人的に私も駅の水漏れ対応好きです。

あれは人間の「不完全さ」でもあると思います。

雨風をしのぐように建築された駅が「自然の力」に侵食されてしまっている姿。

しかし、そこに駅員さんの丁寧な「対応」が入ってくることで

「不完全さへの包み込み。自然の力と共存する意思」を見ることができるような気がします。駅員さんリスペクトです。そして、あのシーンを作品にした毛利さんリスペクトです。

 

 

この展示は本日が最終日です。

最終日のお昼ごろの空は曇り空。

記録的な寒波に襲われた関東は、いつもの冬以上に寒く、冷んやりしています。

でもその冷んやりの中に、彼女の作品はとてもよく生えました。

(もちろん室内はあったかい)

 

きっと無機質の中に有機質を見つけるような暖かい作品群だからでしょう。

 

 アートスペースの案内によると、毛利さんの活躍は目覚ましく、日産アートアワードグランプリ(2015)や、神奈川文化賞未来賞(2016)、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞[メディア芸術](2017)を受賞しています。

毛利悠子 グレイ スカイズ|藤沢市アートスペース|Fujisawa City Art Space

 

 

藤沢アートスペースは予備校の後輩の瀬川祐美子さんが支援プロジェクトに

選ばれているなど、何だか「いいなー」と思えるギャラリーです。

 

 

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瀬川さんの展示も拝見しているのですが、その時は感想をアップできませんでした。

ぜひまた瀬川さんの展示をやってほしいです。

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架菜梨案 Kanaria 個展“動物たちが話をしていたころ”

 

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先日、2018年1月20日架菜梨案 - Kanariaの個展 “動物たちが話をしていたころ”
(東京都中央区八丁堀 現代美術企画画廊 アート★アイガ)に行ってきました。

架菜梨案はArt.and.faceでもインタビューを掲載しています!

架菜梨案の過去の記事は下記です。(2015年7月実施)

アーティスト架菜梨案(かなりあ) - Art and Face


現在フランスのボザール・ド・パリで学んでいる彼女は、年に数回日本に帰国し積極的に国内での活動を進めています。

彼女の作品はまるで愛の世界に運んでくれるように女性らしい強さ美しさで溢れています。私は彼女の絵を見ると、とてもワクワクした気持ちと、女性の奥深さ、移ろいやすさなどを感じ、いつまでもその世界に浸っていたい気持ちになります。

 

彼女の絵は、ケーキの生クリームのように絵の具を厚く塗ったあと、生乾きのうちに色を重ねていっています。絵の具の面白さと描かれている動物や花、人物などのリズムが小気味好い画面を作り出しています。

 

かねてより彼女の作品のファンでしたが、

今回の個展では、これまでとの作品から少しだけ変化を感じました。

 

 

絵画の空間が割れた鏡のようにいくつかに別れているのです。

 

生クリームの世界がゆらりと(あるいはぱきりと)別れたことで、濃厚な愛だけではなく、どこか冷静な面を覗かせてくれるようになりました。

まさに「冷静と情熱のあいだ」といった雰囲気。

もしくは6月の雨上がりにあらわれたアゲハ蝶。

 

新たな境地が生み出されているように感じました。

 

 

見るものを引き込む、架菜梨案 - Kanariaの個展は

 

現代美術企画画廊 アート★アイガにて行われています。

 

 

現代美術企画画廊 アート★アイガ

〒104-0032
東京都中央区八丁堀2-22-9 宮地ビル2F
TEL/FAX 050-3405-7096
地下鉄日比谷線八丁堀駅 【A5】出口 徒歩1分
JR京葉線八丁堀駅 【B1】出口 徒歩4分
JR東京駅 八重洲中央口から徒歩13分

 

【展覧会名】

Kanaria Solo Show “動物たちが話をしていたころ”

【アーティスト】
- 架菜梨案 - Kanaria
会期:2018.1.12(金)-27(土)13:00-19:00
※23(火)は17:00終了

アート★アイガ

http://www.artaiga.com

 

 

イラン ミーリー絨緞✖大磯世代工房 くらしに活きる織物の美

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10月24日(日)、大磯世代工房の企画展 「くらしに活きる織物の美」を拝見してきました。
大磯世代工房はこのブログでも過去に紹介している象鯨美術学院の西村浩幸先生の工房です。象鯨美術学院と併設しています。
過去記事→http://tkhskor.hatenablog.jp/entry/2015/07/25/201158
こちらで一昨日金曜日から開催されている「くらしに活きる織物の美Ⅶ」は世界的に有名なイランのミーリー絨毯を展示販売しています。ミーリーとはサファヴィー朝期の絨毯制作の伝統を復興させた絨毯工房です。

伝統に添った絨毯はどれも美しく、歴史を感じさせるロマンがありました。
全て草木染めのため劣化も少なく、三世代の持ち物にできるミーリーの絨毯。
お客さんは途切れることなく訪れ、西村浩幸先生と奥様でシルバーアクセサリー作家の西村elisa嘉代子さんの絨毯やミーリーについての解説を熱心に聴いていました。嘉代子さんの絨毯一枚一枚の解説は実にわかりやすく、絨毯の魅力をさらに引き出してくれるようでした。
絨毯のモチーフはさまざまで、草木から動物、日常の道具など…。その一つひとつが喜びに溢れていました。
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どれも美しく、いつか一枚購入したいと思いました。
大きなものとなると値段も張りますが、玄関マットなどなら私でも手が届くような値段のものもありました。
頑張っておうちにひけるようになりたいと思いました。
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会期
平成28年10月21日(金)~10月30日(日)
開館時間 11時~17時
10月24日(月)、25日(火)休館
場所
大磯世代工房
神奈川県中郡大磯町高麗2-9-3
http://www.sedaikobo.com/access/index.html

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東京駅にて「12 Rooms 12 Artists UBSアート・コレクション」を見に行きました

先日、東京駅内にある、東京ステーションギャラリーに行きました。

入場料は1000円、少し高めですね。900円ぐらいにして欲しいと思います。

宣伝ポスターが「ルシアン・フロイド」。

ルシアン・フロイドはよく書店の画集等では、見かけますが本物を見たのは始めてでした。

この展覧会を見る少し前に、自分でもヌードクロッキーを久しぶりに行ったばかりでした。毎日続けていた学生時代に比べると、形を取る力が全くなくなっていましたが、やはり人体を描くというのは、興味深い主題です。

今回、鑑賞したルシアン・フロイドの作品は油と版画作品。

エッチング?の線が、誠実で綺麗でした。「上手いね!」というよりは、確実な現実感を追っていて、嘘がないような描き方に見えました。

油の方もしつこく輪郭をおっているようで、重厚感がありました。

(しかし以外に最低限の動きの中での、重厚感かもしれません)

 

個人的にいつも油で絵を描くと、鉛筆や水彩で出せるような、線作業や軽快さが出せなくて、ねっとりした絵になるのが悩みでしたが、それは「ルシアン・フロイドでも一緒だな…」と思いました。

もちろんそれが、いいのか悪いのかはこじんのやりたいこと次第だと思いますが。

ルシアンフロイドに関しては、グッズコーナーに伝記が売っていて、ものすごく面白そうだったのね、いつか購入したいですね。

 

また収穫だったのが、エド・ルーシェイの作品です。

素晴らしく美しい作品でした。デザイン的な要素を作品として魅せていて、完成度が高いですね!

画像でみると簡素になってしまう、作品タイプなので、生で見るべき作品でした。

 

他にも、良い作家、有名な作家などいろいろな方が出ている展覧会でした。

 

一点、気になったのが、東京ステーションギャラリーのレンガの壁なんですが、

すごくぼこぼこしていて、少し気持ちが悪い印象です。

アクの強い作家の作品をあそこに飾ったら、私は鑑賞に堪えられないと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

www.ejrcf.or.jp

国立西洋美術館 カラヴァッジョ展(CARAVAGGIO)ルネサンスを超えた男 感想

  • 日伊国交樹立150周年記念のおかげででカラヴァッジョを見れました!

 

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  2016年4月23日(土)に上野の国立西洋美術館「カラヴァッジョ展 ルネサンスを超えた男。」を鑑賞しにいきました。

 上野駅に到着したのは、16時45分ごろ、土曜日だったので入館は17時までというギリギリの到着でした。

  ある程度は込み合っていましたが、長期開催だからか並んでいたりということはありませんでした。カラヴァッジョの展覧会としては人が少ない気がして、拍子抜けしましたが、空いていることに超したことはないので良かったです。

  すでに鑑賞した周囲の評価も高く、とても期待していた展示でしたが、入ってすぐ作品から発せられる重厚な雰囲気に圧倒されました。作品が空間を支配していましたが、絵画好きとして居心地がよく感じました。

 以下に展覧会の様子を詳細に書いていきますので、鑑賞前にあまり詳しく知りたくない方は読まないでください。

 

 「カラヴァッジョ展」ですが、カラヴァッジョ(Michelangero merisi da Caravaggio)の作品の他に、カラヴァジェスキ(カラヴァッジョの作風を真似た追随者)の作品が8割ぐらい出ています。カラヴァッジョの作品は51枚中12枚でした(公式が傑作11枚となっているのはエッケ・ホマを抜いていると思われる?)見比べなども十分できて、見応えがある展示です。

 描写がいいのはもちろんだが、一番好きだったポイントは構図

 私が一番いいなーと思ったのは、「バッカス」(1597−98年頃 ウフィツィ美術館所蔵)です。表情とか、小太りな感じとかは少しイラつく人物ですが、グラスになみなみと注がれたワイン、髪飾りの豊かさなどが、見ていて気持ちがいい作品です。

(下記作品のリンク先は「ファッションプレス」のカラヴァッジョニュースより

 また「ナルキッソス」(1599年頃 バルベリーニ宮国立古典美術館)も斬新ですごいと思いました。水に手を入れる仕草、表情、手や膝の凹凸、質感の描写など、バランスがよく見えました。

 どれも描写がすばらしいのはもちろんでしたが、何より構図がすばらしいと思いました。(または形の選択がすばらしいともいえる?)人物を描く際の切り取り方が、プロフェッショナルです。カラヴァッジョは下書きをしないで描いていたそうなので、画面と対峙する中で、経験や才能から生まれる五感を駆使して完璧な構図を生み出していたのではないかと感じました。

エマオの晩餐」(1606年 ブレラ絵画館)も自然な光が美しいですが、やはり構図がすばらしいと思いました。「洗礼者聖ヨハネ」(1602年 コルシーニ宮国立古典美術館)も最近のジャニーズみたいな顔立ちで、可憐で良かったです。

 構図が悪いと絵を描いているとき、とっても描き難く描写が進まないと思います。また魅せたいポイントに順番や順位がついていないと、鑑賞者も目が定まらないと思います。その点、鑑賞者にまったく不快感を抱かせない、切りのいい構図で、描写の美しさを完璧にアシストしています。カラヴァジェスキと並べたときに、やっぱり構図の良さが高みに押し上げている気がしました。

カラヴァジェスキたちの作品も楽しい

 カラヴァッジョがいいのは、もう分かっているのですがカラヴァジェスキの中にも、すばらしい作品が多くありました。

  ジョゼペ・デ・リベーラ(Jusepe de Ridera)の「聖ペテロの否認」は登場人物それぞれが画面の中で役割を持って、活き活きと描かれているのが素敵でした。

 バルトロメオ・マンフレーディ(Bartolomeo Manfredi)の「キリストの捕縛」(1613−15年国立西洋美術館)も質感がリアルで見応えがありました。

  カラヴァジェスキたちにもさまざまな個性があり、好き嫌い、善し悪しなどを感じながら見てみると面白いです。ギリギリにいったせいで、後半をしっかりみれていないので、会期中にもう一度行こうと思います、

 世界初公開の「法悦のマグダラのマリア」があるので(まだ見てない)、講演会など関連イベントも開催されていたようです。知っていたら行きたかったですね。バロックが基本好きなので、満足度の高い展覧会となりました。

 

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<以下展示コーナー別 カラヴァッジョの作品

  • Ⅰ 風俗画:占い、酒場、音楽 Genre Painting:Fortune-telling,Taverns,and Music

「女占い師」

  • Ⅱ 風俗画:五感 Genre Painting:The Five Senses

「トカゲに噛まれる少年」

ナルキッソス

  • Ⅲ 静物 Still Life

「果物籠を持つ少年」

バッカス

  • Ⅳ肖像 Portraiture

「マフェオ・バルベリーニの肖像」

  • Ⅴ 光 Light

「エマオの晩餐」

  • Ⅵ斬首 Decapitation

「メドゥーサ」

  • Ⅶ 聖母と聖人の新たな図像 New Iconography for the Virgin and Saints

「洗礼者聖ヨハネ

「仔羊の世話をする洗礼者聖ヨハネ

「法悦のマグダラのマリア

  • ミニ・セレクション:エッケ・ホモ

「エッケ・ホモ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PRADOプラド美術館展スペイン宮廷美への情熱

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東京丸の内三菱一号館美術館へ、「PRADO プラド美術館 スペイン宮廷 美への情熱」を見てきました。
仕事でバテバテになり、休日がない上に、たまにある休日も寝て過ごしてしまうこの頃。
起きたのがお昼でしたがそのおかげで体が回復したので、ルネサンスやら、バロックやらの絵画で癒されたい気持ちを抱え美術館へ。
 
鑑賞していて「どれも素晴らしい」とはなりませんでしたが、有名どころはやっぱり素敵でした。三菱一号館美術館は内装がお洒落な上に東京駅から地下街を抜けて歩いていけるので、いきやすくて助かります。また丸の内あたりはお洒落で、カフェなどもたくさんあるので、買い物などのお出かけにはちょうどいい美術館です。
 
美術館内のお客さんもなんか一味違って、家柄の良さそうなご夫婦、好みな感じのイケメン、明らかに不倫カップル(お金持ち)などがいて、「丸の内だわ」という雰囲気。
 
 
利便性がよく、お洒落なデートスポットとしても、絵画の勉強をしてる人にとってもありがたい美術館です。
 
作品について
特に好きだったのが、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1490年頃ー1576年盛期ルネサンスヴェネチア派(イタリア人))の「十字架を担うキリスト」(1565年頃の作品。つまり晩年)でした。人物の入りが綺麗で、描写もかっこいい。キリストの顔もイケメン。辛そうな感じも良く現れている。腕が太いのに柔らかく描かれてているのも好感度が高い。上にいるおじいちゃん(キレネ人シモネ)の髭がふさふさしてる様子もすごくきれいでした。(晩年の作品なのに、若さがみなぎっているので弟子が描いた気がしなくもないのですが…)
とりあえず印象に残る作品でした。
 
またスペインのエル・グレコ(1541年ー1614年)の作品「エジプトへの逃避」「受胎告知」も小さくて味わいやすく良かった。服や地面や石畳の書き方が情感があってかっこよかった。油絵の良さがたっぷり味わえる作品。
 
ルーベンスもめちゃくちゃ巧い上に華やかで、神がかってました。
19世紀の画家でマルサルの作品も綺麗で良かったです。
だいぶ癒された。しかし作品点数が多すぎるので、見ていてだいぶ疲れた。点数を少なくしもう200円安くしてほしい。

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